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十三人いた!核爆発後のクローズドサークルサバイバル!!【地下別荘の十日間】

地下別荘(シェルタ-)の十日間 (原爆児童文学集 27) - 桜井 信夫
地下別荘(シェルタ-)の十日間 (原爆児童文学集 27) – 桜井 信夫
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【あらすじ】
田上邦彦くんの家は核シェルター建設会社を運営しています。
その日、邦彦くんは小学校の運動会に登校するところでした。
ところが出発直後、おじいさんの栄太郎社長の至急命令で呼び出され、地下シェルターに退避!その直後に核爆発が起こるのでした!
偶然シェルターに避難できたのは13人!彼らは共同生活を始めるのですが、早急に電気系統にトラブル発生!一人また一人と脱落していくのでした!!
果たして彼らの運命は……!!!
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 以前、桜井信夫さんの『コンピューター人間』を読んだ時、この作品のことを知って面白そうだと思ったので今回借りてみました。
 汐文社の「原爆児童文学集」というシリーズの一冊です。このシリーズの収録作品はバラエティに富んでいて、現実に即した本道的な作品が多い中、SF的な作品も含まれていて、本作品はSF編の中の一冊です。
 
 主人公の兄妹は核シェルター会社の社長の子どもで偶然核シェルターに避難して核爆発時に生き残ることができました。
 核シェルターに避難できたのは全部で13人!
 この核シェルターは当時の科学の粋を集めたデラックスなもので各部屋にユニットバスも完備。まるでクルーズ船のような快適なものですが、早々に電気系統にトラブルがあり一人また一人と脱落していきます。
 
 人の性格にも色々あって、前向きに生きていこうとする人もあれば後ろ向きな人もいます。
 子ども時代にこういう物語を読んで、将来似たような事態に陥った時にシミュレーションしておくのもいいと思います。
 さすがに核シェルターというのは非現実的ですが、何かのトラブルで閉じ込められたり立ち往生することもあると思います。そういう時にどのような言動をするべきか、本書を読んで考えておきましょう!
 
 13人の関係は核シェルター会社の3世代家族が中心ですが、中には会社関係の人物も混じっています。
 つまり大人の会社関係の上下関係もあるのです。
 例えば、設備課長の北村さん、社長秘書の蓮見さん、社長の孫の家庭教師役の藤井さん、お手伝いの辻時子さん、執事兼運転手の岸本さん。
 それから、社長の囲碁友達で核シェルターの見学に来た石原産業の社長夫婦。
 こういった人間関係が絡むと家族関係より複雑になっていきます。それがこの作品に広がりと深みを出しています。

 夜の間に脱走した石原さん夫婦が「核の冬」に関する本を残していました。
 それに関して仲良くなった若い世代(邦彦・妹の美由紀・家庭教師の藤井さん・お手伝いの辻さん)が話し合う場面があります。
 そういえば「核の冬」、ありました。夏休みにNHKでそれに関する番組が放映されて話題になりました。私も見ました。
 検索すると「核の冬」とは1983年に提唱された理論で、NHK特集は1984年に放送されています。
 そして本書が出版されたのは1985年12月。最新理論を取り入れたSFだったんですね。
 そして本作品では「核の冬」現象は発生していないようです。最新理論を取り入れながら否定的に扱っているという、著者のリテラシー能力が垣間見られます。
 ウィキペディアには「核の冬」に関連した作品として映画『ザ・デイ・アフター』が挙げられています。これも話題になりました。
 TVで放映された時私はビデオでタイマー録画したのですが、余りに怖かったので結局見ずに上書きしたのです。
 当時の世界情勢は本当に核戦争は現実的な恐怖であり、私も本気で恐れていました。
 その後ゴルバチョフが登場して東西冷戦は緩和し、核戦争の危機は去ったかのように見えました。
 しかし最近また世界情勢は悪化して核戦争や原発施設への攻撃というのは現実的な脅威として存在しています。

 仲良し4人は広間の書架から地下別荘(核シェルター)のパンフレットを見つけます。
 こんなもの作っても意味ない!と邦彦は破り捨てます。

「いちばんの安全は」「戦争にならないこと、核爆弾がないことなのよ。」
「これほど単純明快、だれでも考えつくことなのに、人間は気がつかないふりをしている。自分だけは生きのこれる、安全なつもりでいる。核爆弾を一刻でもさきに発射したほうが勝つつもりでいる。そして死ぬのは、戦争や核爆弾とは直接関係のない、おおぜいの人たちなんだ。」
 
……と時子さんや藤井さんは言います。
 しかし資料的価値があるので核シェルターのパンフレットは厳重に保管しておくべきだと思います。後世にこのシェルターが発見された時に貴重な資料となるはずです。

 最後、シェルター生活が立ち行かなくなって若い4人は出発します。北西の方角・辻時子さんの故郷・新潟目指して。
 途中、偶然生き残った老人に遭遇しますがこれは軍国主義を捨てられない古い思想の持ち主でした。彼を無視して4人は進みます。
 4人のその後は?
 当時本作品を読んだ子ども達はどう想像したのでしょうか?
 著者の桜井さんは軍拡競争は無意味だと言うつもりで本作品を書かれたのでしょう。
 しかし現在の日本はむしろ軍拡競争を肯定し、戦争に反対する意見を弾圧する方向に向かっています。
 本作品は現在の日本人にこそ読まれるべきだと思います。
 
……ということで、しばらくこの汐文社の「原爆児童文学集」を集中的に読んでみることにします。(2026.0322)

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