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アンドロメダ星雲 エフレーモフ


装幀 金森達 箱絵・口絵・挿絵 南村喬之

 宇宙船タントラ号の大冒険!
 友人達が住む惑星からの連絡が途絶えたので調査に行くとその惑星は……。
 燃料補給に失敗して燃料不足に……。
 地図にない重力星の重力にとらわれて……。
 そこに存在した宇宙船と謎の生物……!
 ハラハラドキドキの展開です。
 特に、燃料が不足して地球まで帰れないという設定がハードです。
 宇宙探検物語の全ての要素が出揃っているのではと思うくらいです。
 特にこの物語の最後の印象的な終わり方が特筆されます。
 最新型宇宙船白鳥号は、遠いアンドロメダ星雲目指して長い旅路を出発します。
 物語の主人公とヒロインはそれに搭乗します。
 当時の技術でも人の寿命より長い時間なので、当然乗組員は生きて地球に戻って来ることはできません。子孫の代が任務を受け継ぐのです。
 物語の最後で、主人公やその友人達との別れが感動的に描かれています。
 当時読んだ子ども達には非常に印象に残ったラストだと思います。

 なお、本作品は理論社のジュニア・ライブラリーというシリーズからも出ています(川上洸訳)。
 このジュニア・ライブラリーの読者対象は小学校高学年・中学校全学年ということですが、2段組で細かい字がぎっしり詰まっていて、非常に読みであります。
 当時の小学生や中学生はこんな本を読んでいたのですか(驚き)。
 で、こちらは集英社版より分量が多いのでもう少し詳しいのかと思って読み比べてみると、何と集英社版にはないエピソードがあった!
 そういえば集英社版では訳者の杉野喬さんが書いています。
「原作はぼう大なもので、ここに訳したのは、そのなかの宇宙探検そのものの部分です。」
 理論社版では、エルグ・ノール隊長指揮するタントラ号の宇宙冒険物語と、地球上での評議会や秘密科学実験に関するエピソードが交互に描かれていました。
 集英社版ではエルグ・ノール隊長の友人や元恋人という方々が唐突に現れます。
 理論社版ではそれらの人々の物語も丁寧に描かれています。
 この方々にもこんなドラマがあったのですね。
 宇宙でのエピソードは映画やドラマを見ているようなドラマチックなものですが、地球上でのエピソードは子どもには少々難しくて地味目ではないでしょうか。
 実際、大人になった今読んでも苦労しました。
 何せ文字が小さくて2段組でぎっしり詰まっていて、1ページ読むのに2分近くかかって、こんなのいつになったら読み切れるのかと絶望的な気分になりました。
 昔の小学生はこんな本を読んでいたのですか。
 まあ大人にとっても歯ごたえあったのですが、噛み締めれば噛み締めるほど味がある物語ではありました。
 地球篇の物語を読んだ後だと最後の別れのシーンがもっと味わい深くなります。


 
 川上洸さんはこの物語について
「この作品そのものは、とくに青少年のために書かれているわけではないので」
と書かれています。
 大人になって読めば人間ドラマの味わいがより分かると思います。
 こんな作品が子ども向けに紹介されていて、それを読んだ子ども達は幸せな読書体験を得たのではないでしょうか。そして大人になって完訳版を読めばもっと幸せではないでしょうか。
ゼロよりは50でも30でもとにかく読んだ方がいいと思います。
 よって私は、少年少女向けにこういった紹介の仕方はあり得るし、むしろ推奨されるべきだと肯定的に思います。

 それにしても、この物語で描かれている未来社会は理想的で、人間も理性的です。
 ただ一人、宇宙編でも地上編でも嫌な奴として描かれているのが天文学者のプール・ヒス氏であります。悪人としての役割を一心に背負わされた感があります。
 そして、本書の中核を占める宇宙探検物語編において、宇宙船の名前は「タントラ号」となっています。
 ソ連の作家が理想的な未来を描いたSFで「タントラ」とはまた、インド風なネーミングです。
 SFというより、神秘やオカルト風なネーミングです。
 一体どういうつもりでこう名付けたのでしょうか。

 なお、ジュニア・ライブラリー版は、1959年に同じ川上洸さんが訳した『アンドロメダ時代 大星雲への旅』を加筆修正したものだそうです。
 原作の発表は1957年。その2年後の出版ですから、日本の少年少女向けSFの紹介は優秀です。
(この版では「大宇宙連合」が「大圏環」と訳されています。)
 なお、完訳は1969年、早川書房の世界SF全集から出ており、同じ飯田規和訳による抄訳もあるようです。

『宇宙パイロット37号』
偕成社/SF(科学小説)名作シリーズ12 1968年

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