うごく島の秘密/動く人工島


  ★うごく島の秘密 少年少女ベルヌ科学名作12
   訳:塩屋太郎  挿絵:清水耕蔵 小野田俊 1968年学研

【あらすじ】
 アメリカに演奏旅行に出かけた4人の音楽家が招待されたのは、巨大な動く人工島・スタンダード島だった!
 島は太平洋の島々を周遊しながら悠々と航海を続ける!
 しかし安泰の日々は長く続かなかった!
 やがて次々と訪れる危機!一行は無事帰還することができるか!?
 
【感想】
 巨大な人工島がスクリューで動いて太平洋上を航海するんですよ!
 スケール大きな想像力です。
 調べてみると人工島というのは現在も実現しているようですね。
 地球温暖化で海水面が上昇した暁には人類は人工島で住むことになるのかもしれません。

  [wikipedia:人工島]
  [wikipedia:人工島の一覧]

 それにしても、人工島をスクリューまで付けて動かす必要はあるのでしょうか。
 まあ物語的には動かした方が面白さが出ますか。
 ヴェルヌが執筆していた当時はTVなんかもなかったし、太平洋上の島々を巡る描写があった方が良かったのでしょうね。
 スタンダード島の住人は金持ちが多いらしく、訪れる島々を観光したりしています。
 クルーズ船で旅行している感覚なのでしょう。
 今でも富裕層向けにこんなクルーズ島旅行があったら受けるのと違いますか?
  
 このスタンダード島、すごいですよ。畑も川も公園もあるし、電車も走っているし工場も港もあります。
 本当に一つの都市と郊外がそのまま海上を航海しているのです。
 ただ、岬や半島や入り江や砂浜がなく、海岸は無数のボルトやリベットでとめられた鋼鉄のふくらみにすぎないと書かれています。
「科学の驚異をもってしても、自然の美しさを再現できないのだ」
と書かれています。
 しかし21世紀になった現在、自然のまま残っている海岸はどれだけあるのでしょうか。
 自然の美しい海岸はなくなりつつあります。そういう意味でスタンダード島は未来の都市の予言なのです。
 あと、高い山もないと記述されています。
 そのためスタンダード島の住人は島に寄港した際、登山を楽しむようです。
 将来スタンダード島に山を造りたい、という記述もあります。

 ところでスタンダード島には複数のホテルがあると書かれています。
 しかし何でわざわざホテルが必要なんでしょうか。
 同じ家にばかり住んでると飽きてくるのでたまにはホテルで宿泊して気分を変えているのでしょうか。
 ホテルは単なる宿泊施設のみではなく豪華な社交施設という意味もあるのでしょうか。
 まあともかくこのスタンダード島は色々な施設や人工の自然が詰め込まれていてなかなか面白い創造物です。
 映像化したのを見てみたい。
 CGで作成してグーグルアースみたいに見られないでしょうか。
 今回参照した本では、全体像を描いた挿絵は各1枚づつしかありません。それもごく簡単なものです。
 
 
 
 もっと詳しい地図みたいなのを見たいですね。
「文豪ストレイドッグス 55Minutes」でスタンダード島が舞台になっているようです。
 確かにスタンダード島は物語の魅力的な舞台ですね。
  

  
 人類が宇宙開発に希望を持っていた1970年前後には、人類の宇宙探検の方法として、「都市型宇宙船」という方法が考えられていたようです。
 
宇宙未来史 
  https://sfklubo.net/spacedevelopment/
 
 私も都市型宇宙船を舞台にしたSF小説を読んだことあります。
 都市ごと太平洋を航海するスタンダード島の物語も都市型宇宙船ものの原型といってもいいかもしれません。
 そして人々の権力争いから崩壊に向かう過程は、「宇宙船地球号」の縮図でもあります。

 しかしこれだけ素晴らしいスタンダード島について、主人公の4人は知らなかったようです。
 秘密都市だったのかと思うと、寄港地の島の人々とはオープンに付き合っているようです。
 フランス海軍とは親密な関係で、イギリス海軍とは敵対しドイツは無関心と描写されています。
 スタンダード島とはアメリカの会社で、アメリカの富裕層を購買対象としているようです。
 だからアメリカの富裕層には知れ渡っているけどフランスから来た芸術家が知らなかったということはあり得そう。
 しかし当時も新聞はあったようです。スタンダード島は格好の新聞ネタになりそうです。
 だからアメリカで演奏旅行を続けていた4人も新聞を読んでいたらスタンダード島を知っているということもあり得そうなのですが。
 まあそこは物語ですから。

 今回私が読んだのは、学研少年少女ベルヌ科学名作全集版と創元SF文庫版。
 ウィキペディアによると、創元版は完訳ではなく抄訳と書かれています。
 
『うごく島の秘密』塩谷太郎(抄訳)、学研、1964年
『動く海上都市』三輪秀彦(抄訳)、集英社、1968年
『動く人工島』三輪秀彦(抄訳)、創元SF文庫、1978年
 
 
 
ヴェルヌ全集〈第16〉動く海上都市 (1968年) (コンパクト・ブックス)
  
 創元版は細かい字が詰まっていて目が悪くて速読もできない私としては読むのが大変でしたが、これでもまだ抄訳なのですか!
 そして創元版は集英社のヴェルヌ全集版と訳者が同じなので、集英社版の再版のようです。
 創元版でも読めるのだから集英社文庫のジュール・ヴェルヌコレクションでは本作品はラインナップされなかったのでしょうか。
 少年少女向けの学研版は当然、文字数が少ないのですが、物語的には主要エピソードは全て描かれています。
 私のように速読ができない大人が読んでもこの作品の魅力は味わえると思います。
 読み比べて一つ面白い所がありました。
 冒頭、4人の主人公は馬車に乗ってサン・ディエゴに向かっていますが、馬車が事故に遭います。
 4人は怪我をして歩けない御者を置いて近くの村まで歩いていくことにしますが、その際、御者に迎えをよこすと約束します。
 村に着いた4人はマンバーの招待を受け、マンバーの車に乗ってスタンダード島に向かいます。
 学研版では車に乗る前にフラスコランが思い出して近くの家の人に御者救出の伝言を頼む場面があります。
 ところが創元版ではそのシーンはありません。
 果たして原作ではこのシーンはあったのか、それとも訳者・塩屋太郎さんが追加したオリジナルシーンなのでしょうか。
 創元版では音楽療法についての記述があり、ミリアード市では音楽を健康増進に活用しているとされています。
 ヴェルヌ活躍当時でも音楽療法の理論はあったのですね。
  
  [wikipedia:動く人工島]
  

  

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