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闘技場 フレドリック・ブラウン 星新一訳


  闘技場 (ボクラノSFシリーズ)
  
  
海竜めざめる』を読んでボクラノエスエフシリーズというのを知ったので、この機会にかの有名なフレドリック・ブラウンを読んでみようと思ったのです。
 表題作の『闘技場』は地球人代表として宇宙人と1対1で戦うことになった男の話。
 設定はよく練られているし、結果に向かう過程もよく描かれています。
 私自身が主人公の立場になればあきらめてギブアップしてしまいそう。
 これとよく似たのが、『ノック』。
 地球侵略に来た宇宙人に生き残った一人の地球人が面従腹背で戦って追い返す話。
 こういう屈しないで徹底的に戦う姿勢は、肉食系の民族の思考なんでしょうか。
 仏教的諦観の世界に生きている私にはとてもそういう発想は出てきません。
 しかしこの激烈な競争社会で勝ち抜いて生き抜いていくためには、こういった思考の物語をたくさん読んで自分を奮い立たせて自分で自分をマインドコントロールするくらいでないといけませんね。
  
 それでこのボクラノエスエフ版、装丁が非常に凝っています。
 目次もデザインの一環となっていて、原題もデザインされた文字で表記されています。
 本文の文字も凝っていて、特定の名詞が太く表記されています。
 島田虎之介さんの挿絵もマンガ的です。
 マンガ風にビジュアルにこだわった装幀ということではないでしょうか。
 フォントが読みにくいという意見もあるのですが、これなら若い世代にアピールできると思いますよ私は。
 若い世代へのアピールといえば、今風の萌え絵というかライトノベル風の装丁が思い浮かびます。
 古くからある文庫本でも、古典的文学作品の表紙を萌え絵風にしたら若い世代によく売れた、という話があります。
 このボクラノエスエフシリーズもそういった効果が証明されている方向の装丁を採用するという安直な方法もあったはずですが、あえてそれをせずに祖父江慎さんによる別の方向の装丁に挑戦したということで、そのチャレンジ精神は認めていいと思いますよ私は。
  
 星新一さんのブラウン翻訳というと、本書以前にも3冊確認されます。
   ★フレドリック・ブラウン傑作集  (1982年) (サンリオSF文庫)
   ★さあ、気ちがいになりなさい (異色作家短編集)  2005/10/7
   ★さあ、気ちがいになりなさい (ハヤカワ文庫SF)  2016/10/21

 ハヤカワ版は文庫版が今でも入手できるから、ボクラノエスエフ版ではサンリオ版に収録された作品が中心に選ばれているようです。
 ハヤカワ単行本版が図書館にあったのでボクラノエスエフ版と読み比べてみました。

ハヤカワ版 12作品
(こちらのみに収録 7作品)
 ぶっそうなやつら
 電獣ヴァヴェリ
 シリウス・ゼロ
 町を求む
 帽子の手品
 沈黙と叫び
 さあ、気ちがいになりなさい
  
ボクラノエスエフ版 14作品収録
(こちらのみに収録 9作品)
 星ねずみ
 犯行
 事件はなかった
 闘技場
 回答
 人形芝居
 狂った星座
 任務完
 終
  
どちらにも収録されている作品 5作品
 みどりの星へ
 ノック
 おそるべき坊や
 ユーディの原理
 不死鳥への手紙
  
 ボクラノエスエフ版には「最小限の改訂をほどこした」という注意書きがありますが、読み比べてもほとんど変わらない程度だから、本当に最小限だったのでしょう。
 ブラウンの作品はショートショートだとか星新一の共通点とかがよく言われています。
 しかし今回私が読んだ感じでは、星新一のショートショートとブラウンの短編の違いというものを感じました。
 星さんのショートショートでは、枝葉末節を省いて骨組みだけを描いて一直線に結末に向かっていきます。
 一方、ブラウンの短編では、枝葉末節というか、作品の舞台設定が詳しく描き込まれているという感じです。会話なんかも細かく描かれていますね。
 黒沢明監督が映画を撮影する時に映画に映らない箪笥の中身までこだわったという話がありますが、そんな感じです。
 まあ専門家でも何でもない私の個人的感想ですから、聞き流して下さい。
         (2019.08.10)
  

   
 ボクラノエスエフ 近い過去に潰えていた夢
  海竜めざめる 星新一訳新旧
  

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