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ボクラノエスエフ 近い過去に潰えていた夢

 

ジョン・ウインダムの『海竜めざめる』について調べていて、福音館書店の「ボクラノエスエフ」というレーベルについて知りました。
このボクラノエスエフというレーベル、私は今回初めて知りました。
どうやら2009年に創刊され、2015年までに6冊だけ刊行されてその後刊行されていないようです。
私は朝日新聞を購読していて、本の広告・文化面・土曜書評欄(以前は日曜)をしっかり読んでいるつもりだったのですが、掲載されていたのでしょうか。
潜在的な読者になり得る私に広告が届いていなかったのです。
(もっとも、日曜読書欄は読むのは時間がかかるので速読のできない私はためていって少しづつ読んでいます。
そしてあまりにたまり過ぎて仕方なくたまった分を捨てたことが何度かありました。
その読まないで捨ててしまった分の中に記述があった可能性があります。)

 

しかし現代のヤングアダルト層に向けてSF入門的な叢書を出すとは、斬新で素晴らしい企画だと思います。
刊行リストを見ると、小松左京に筒井康隆、星新一、フレドリック・ブラウン等と攻めています。
もはや熟年世代となった私にとって、
北野勇作と佐藤哲也は分からないのですが、現代のヤングアダルト向けの叢書なのだから最新作が入っているのも当然でしょう。
わずか6冊ながら日本の古典的大家から最新作、それに海外作品の翻訳までバラエティとバランスに富んだ選定です。
その後も刊行が続いていたら素晴らしいものになっていたでしょう。
(いや、まだあきらめてはいけないのか?)

 

この精選された6冊の中の第一回配本にジョン・ウィンダム『深海の宇宙怪物』が入っていたとは、非常に渋い選択です。
確かに、元来別々の本として刊行されていた星新一の翻訳に長新太さんの挿絵を組み合わせるとは斬新な企画です。
ただ、作品のインパクトとしては、少し弱いように思えます。
失礼ながら、物語の展開としては少々地味でインパクトに欠ける作品だと思います。
同じウインダム作品なら、中尾明訳・あかね書房版『怪奇植物トリフィドの侵略』の方が良かったのではないかと。
『怪奇植物トリフィドの侵略』は私にSFというジャンルを意識させた強烈な作品であり、小学校の図書室で何度も借りて読んだし、創元推理文庫の完訳も何度か読みました。
一方『海竜めざめる』は一度星新一訳版で読んだけど内容はすっかり忘れていたほどです。
私としては トリフィド >>> 海竜めざめる なのですが、皆さまはどうでしょうか。

ボクラノエスエフでは星新一の訳書が2冊ラインナップされていますが、どちらも翻訳書です。
2冊入るのだったら、1冊は翻訳書でもう一冊は作品集という選定もできたのではないでしょうか。
ブランコの向こうで』なんかはこのシリーズにピッタリだと思うのですが。
さらに、長新太さん挿絵のジュブナイルSFということであれば、『ついらくした月』という選定もあります。
まあこれは2003年に復刊して現在でも入手可能なようだからあえて出す意味はないか。

昔のジュブナイルSFシリーズから復刊するという企画で言えば、『合成人間(ドウエル教授の首)』『合成怪物/合成脳のはんらん』などの方がインパクト大きいと思うのですが。

ボクラノエスエフシリーズを刊行するに当たって「小学校の図書室で借りた思い出深いSF作品」とでもいうアンケートをとっていたら、『合成人間(ドウエル教授の首)』『合成怪物/合成脳のはんらん』『怪奇植物トリフィドの侵略』あたりが上位に入ると思うのですがどうでしょうか。
まあ今頃こんなこと言っても仕方ないことですが。
それにしても、ボクラノエスエフシリーズが6冊で終わってしまうのは惜しいことです。
はかない希望だけど、続刊希望!

深海の宇宙怪物 (SFこども図書館 3)
海竜めざめる 星新一訳新旧
『海底の怪』国松文雄訳 元々社〈最新科学小説全集 第4〉
ボクラノエスエフ 近い過去に潰えていた夢

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