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進撃の目ん玉【光る目の宇宙人】と努力と勝利

  ★光る目の宇宙人 
 ホリー・作 南山宏・訳 武部本一郎・絵
 偕成社SF名作シリーズ20 1970年4月15日発行

【あらすじ】
 宇宙科学研究所に務めるリンク・ホスラーは野球観戦中、空からやって来た巨大な目に襲撃される。
 その目は不思議な催眠光線を放ち、人々を操り、地下基地に連れ込むのであった。
 リンク達科学者は政府から派遣されたスタンレー大佐率いる一軍に協力して対応にあたるが……。

【感想:ハンターホリー女史の摩訶不思議設定侵略SF】

 アクセス狙いのためにあざといタイトルを着けちゃってすみません。何せ当ブログは検索に弱いもので……。
 さて本作品は宇宙人の侵略がテーマですが、なかなか不思議な設定です。
 登場する宇宙人・ザイン人は巨人のヒト型宇宙人なのですが、地球の重力に耐えられず寝てばかりいます。
 そして何と驚くことに、身体の一部を分離させて飛ばすことができるのであります!

 日本人の私なら、式神や生霊や「気」を飛ばす方がスマートだと思うのですが、さすが物質主義のアメリカです。身体をそのまま飛ばす設定です。
 飛ばすのならどの器官が便利かと思えば、やはり「目」でしょう。いわば偵察衛星・現代で言うドローンであります。
 そしてこのザイン人は放射能をエネルギーとしていて、母星の放射能が枯渇したために他の星に移住するために放浪しているという。
 本作品執筆当時は放射能がSFのトピックとして注目されていたのでしょうね。
 現代の科学から見てこの設定はどうなのでしょうか?
 放射性壊変より発生するエネルギーを食っているということは、いわば「原子力エネルギー消費型宇宙人」ということなのでしょうか?しかし放射能が枯渇とはどういうことでしょうか?
 ウラン系列などの崩壊系列は膨大な半減期を持っていて、これが原子力利用のネックとなっているわけです。
 放射性元素は壊変を繰り返しいずれ安定同位体になるそうですが、全ての放射性物質が安定同位体に変化した世界というのは、それはいわばエントロピーゼロの世界であります。どれだけの時間がかかり、どんな世界になるのでしょうか。

 それでこの「目」は、物理的に破壊されてもザイン人の持つ超常現象的能力で復活するという設定。これはズルい。そんなこと科学的に可能なのでしょうか。空想科学読本的に分析するとどうなんでしょうか。ともかくこれでは勝ち目ありません。

 ザイン人はテレパシーや催眠の能力を持つので地球人の心を読むことができ、操ることができます。
 それで、地球人に核兵器の継続的な爆発を要求するのです。
 そんな設定では地球人に勝ち目があるわけありません。
 私などは仏教的諦観の世界に生きている東洋人だから、諦めてしまいそうです。
 しかし主人公のリンク・ホスラーは諦めることを知らないマッチョなアメリカ人であります。科学者のはずなのになぜかマッチョであきらめずとことん抵抗します。まるでダイ・ハードのブルース・ウィリスです。

  

 思えばアメリカのSFは、諦めないで戦い・勝つ物語が多いです。
 例えばジャック・フィニイの『盗まれた町』やフレドリック・ブラウンの『闘技場』。
 ジョン・W・キャンベル・Jr『物体Xの恐怖』は原作版と映画版では結末が違っています。
 いやSFなどと大袈裟なことは言わずに、今では少年マンガ雑誌でも困難に耐え勝利するストーリーが主流のようです。少年ジャンプのモットーは「友情・努力・勝利」のようです。だから少年ジャンプなどを読んで育った人はあきらめずに勝とうとする。
 一方私はそんなマンガよりアンチハッピーエンドに終わる純文学寄りだったので簡単にあきらめてしまう。

 それはともかく、こんな圧倒的不利な状況で主人公リンク・ホスラーに勝ち目はあるのでしょうか?

 リンク達研究所員は「人工重力コントロール」を研究していて、それが実用化寸前だということが伏線になっているのですが、おいおいそんなことが可能なんですか?
 ここがSF作家の発想のすごいところであるし、作家の物語構築のうまいところです。
 作家は自分が設定したルールのもとで作品を動かします。その設定がうまく当たって評価されるか、滑って失敗作に終わるかがその作家の実力の見せ所であります。
 今では名作漫画と言われている『キン肉マン』『ドラゴンボール』『ジョジョの奇妙な冒険』『鬼滅の刃』『ONE PIECE』『進撃の巨人』『文豪ストレイドッグス』などは、作者が設定した世界観の中でバトルを繰り広げて、それが評価されて読み継がれているのです。
 思えば私は上に挙げた作品のうち、『キン肉マン』しか読んだことありません。それも途中までです。
 私が諦めが良すぎるのは、戦って勝利する物語を楽しんだ要素が少ないのかもしれません。
 だから皆さん、子ども時代はあきらめずに努力するSFを読みましょう!
 そして勝利を目指し、創作と人生を楽しむのであります!!(2024年12月14日)

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