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選抜落選からの大逆転!『宇宙にかける橋』福島正実


福島 正実 (著), 石田 武雄 (イラスト)

(当サイトは全てそうなんですが、今回もネタバレ注意です!)

 誘拐されたと思われる友人の中井まこと君について調査していた英雄くんとお兄さんの雄一さんが宇宙人に襲われた!お兄さんは意識が戻らず入院します。
 お兄さんの寝言を聞いて警察に向かった英雄くんは宇宙人に遭遇し、海底の宇宙船に連れて行ってもらいます。

 そこで知った衝撃の事実!!
 リゲル星人が開く宇宙博覧会に出席させるため、世界各国から隕石好きの少年少女達を集めていたんだよ!!
 な……、何だってえ~~~~~~!!!!!
 どうやら出席者は各国一名ずつらしく、日本からはまこと君が選ばれていたのだった!
 ということは、主人公の英雄くんは選考漏れ、つまり落選者だったのです!!
 ライバルのまことクンに一敗血にまみれていた英雄くん。
 ここからの英雄くんとまことくんの議論が白熱します。
「余計なことして騒ぎが大きくなってリゲル星に行けなくなったらどうするんだ!この落選者めが!」
とまことクンがエリート風を吹かすと
「お前ら悪い宇宙人に騙されてるんじゃないか?俺なら信用しないな」
と嫌味を言う英雄くん。
 それを聞いていた各国代表の子ども達にも動揺が広がって……。
 
 面白い議論なのでもっと聞きたかった気もしますが、ここでリゲル星人の仲裁が入ります。
 実はリゲル星人達の間でも無断で子ども達を招待する行為について賛否両論あったようです。
 英雄くんの勇気を見て反省したリゲル星人は反省し、子ども達を一旦家に帰し、家族の承認をもらってから再び迎えに行くことになりました。
「それより、これから、たいへんだよ、まこと。おとうさんやおかあさんを説得するのが。それに、テレビや新聞やマスコミがさわぐしね」
と二人が海と空を見てうなづくシーンで終了です。

 お呼ばれ外泊には当然家族の承認は必要ですが、それだけではない大問題のような気がします。
 近所の友人の家に泊まる程度のものじゃなく、460光年離れたリゲル星なのです。
 家族の承認どころか、国家的な大騒動となることが予想されると思うのですが……。
 それは大人になって現実的になった視点からの突っ込み。
 ジュブナイルSFとしては、この結末で成り立っています。

 そしてこれが私が子どもだった頃の典型的なジュブナイルSFです。
 友好的な宇宙人との交流、未来はあくまでも明るく希望が持てる結末。
 国土社の創作子どもSF全集には
 
砂のあした

親切な砂型生命体 砂のあした 小沢正


消えた五人の小学生
  http://sfclub.sakura.ne.jp/kokudosha06.htm
犬の学校
  http://sfclub.sakura.ne.jp/kokudosha16.htm
だけどぼくは海を見た
  http://sfclub.sakura.ne.jp/kokudosha17.htm
日本子ども遊撃隊
  http://sfclub.sakura.ne.jp/kokudosha05.htm

などのような不安をかきたてる作品も多くあって、それが当時の子ども達のトラウマとなって今でも良き思い出になっているようです。
 しかし本作品はそういう方向性ではなく、明るく希望が持てる正統派ジュブナイルSFではないでしょうか。

 さて、子ども達が家に帰って家族にリゲル星人のことを話した後、どうなるのでしょうか。
 その後の展開は読者の子ども達に考えてもらおう、と一番いいところで終わっています。
 続きを色々と想像するのも面白くてためになる読書体験だと思います。
(石川英輔『ソレマンの空間艇』のパターンです。)
 子ども時代の私は単純だったからストレートにリゲル星人と地球との友好関係が始まって地球は争いや貧困のない住みやすい星になっていくだろうと想像していたでしょう。
 しかし大人になって社会の現実を知った今となっては、そう簡単にいくんかのうとマイナス思考で考えてしまいます。
 そもそもそんな簡単に開国ならぬ開星がスムーズにいくでしょうか。地球内部でも色々な争いが起こりそうです。
 また、地球の歴史でも、先進国と後進国の関係問題がありました。
 先進国が後進国を友好的に導いてくれればいいのですが、後進国を侵略したり騙したり不平等条約を結ばせたりした例もあります。よく考えると、やっぱりリゲル星人に騙されていたということもあり得るのではないでしょうか。
(その騙されていたというパターンの作品が川又千秋『夢の戦士』です。)
……と、大人になってから読み返すと子ども時代とはまた違った突っ込みができるというのもジュブナイルSFの愉しみではないでしょうか。

(蛇足1)
誘拐されたまことくんの捜索をしていた英雄くんとお兄さんの雄一さんはテープレコーダーを発見!再生すると誘拐現場が録音されていた!何と都合の良い……。隕石研究家クラブのメンバーと待ち合わせをしていたまことくんが用心のために録音していたとも考えられますが……。まあ出入り自由な宇宙人ならば学校の理科室に入るのもわけないでしょうが……。
 その後英雄くん達はリゲル星人に襲われるわけですが、目的を遂行したリゲル星人が一体何で犯行現場にいつまでもいたのでしょうか。
  
(蛇足2)
 主人公の英雄くんも友人の中井まことくんも隕石収集が趣味のようです。
 私は隕石について詳しくないのですが、小学生でもコレクションできるものなのでしょうか。
 ネットの発達した現在ならともかく、ネットのない当時はどうやって情報を集めていたのでしょうか。
 

(蛇足3)
 主人公の吉川英雄くんは小学校高学年という設定のようです。
 で、お兄さんの雄一さんは新聞記者としてバリバリ働いています。
 ということは、かなり年の離れた兄弟です。
 当時はこのような年の離れた兄弟は普通に見られる存在だったのでしょうか。

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