少年少女エスパー戦隊結成！Ｓ連邦超能力部隊による日本爆破を阻止せよ！！【少年エスパー戦隊】
★少年エスパー戦隊 (創作子どもSF全集 7)
豊田有恒 (著) 藤沢友一(イラスト) 国土社1969年
★ ☆ ★ ☆ あらすじ ★ ☆ ★ ☆彡
お正月に住宅街の空き地でたこあげをしていた次郎は、車にひかれそうになった女の子を助けようとしてテレポーテーションします！その後不思議な呼び声に導かれ、亜矢子という少女と出会うのです！仲良くなった二人ですが、ドクター・ルウ率いる謎の組織に誘拐されるのでした！
「きみたちエスパーは、水爆以上のおそろしい新兵器なのだ」
な……、なんだってえ～～～～～～！！！
その後良太やその弟・ケンぼうに妹・ひろ子、超能力犬のビルケらを仲間に加え、超心理学を研究している南山教授を指導者にして少年エスパー戦隊を結成！ソラリス連邦の超能力部隊であるドクター・ルウ一味と対決するのだった！
ドクター・ルウ率いる悪のエスパー軍団の精鋭達は超能力タナトロギーの使い手・ペトロフ！超能力メデューザ変化の使い手・ゲオルギー！超能力絶対零度の使い手・ヤーコフら！果たして少年エスパー戦隊はこれら邪悪な超能力兵器軍団から日本を守れるのでしょうか！！！
★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆彡
少年少女のエスパー達が集まっていくところは『超人間プラスＸ』を思い出しますね。
３０年前、ジュニア向けＳＦはここまで描いていた！
選ばれし者の葛藤と使命を描いた本格SF！！
超人間プラスＸ 小隅黎
http://sfclub.sakura.ne.jp/21csf04.htm
また子ども達が戦隊を作って活躍するというのは、『日本子ども遊撃隊』を思い出します。
寓意に富んだ、結構深読みできるＳＦ童話！
2013年、このSFが現実のものに！？ 現実はSFより奇なり！？
日本子ども遊撃隊 北川幸比古
http://sfclub.sakura.ne.jp/kokudosha05.htm
しかし本作品はあくまでもエンタメに徹した娯楽大作です。あまり難しいことを考えずに話の流れに乗って楽しむべき作品かと。
超能力者が超能力を使う時に
「超能力〇〇！」
と技の名前を言うので、私などは子ども時代に見ていたテレビマンガの『バビル２世』『デビルマン』『マジンガーＺ』などを思い出しました。
角川文庫版の解説で手塚治虫さんが小松左京の『エスパイ』、石森正太郎の『サイボーグ００９』、そして山田風太郎の『忍法帖』を引き合いに出しています。Twitterで作者は本作を活字でマンガを描くように書いた、という記述がありました。まさにそんな感じです。
本作品は「よみうり少年少女新聞」に連載したものを書き直して1969年に国土社の創作子どもSF全集の一冊として発行されました。その後1976年に角川文庫に収録されています。
★少年エスパー戦隊 (角川文庫 緑)
豊田有恒(著) 金森達（絵） 角川文庫 1976年
矢野徹さんの『孤島ひとりぼっち』は創作子どもSF全集版をそのまま収録されていましたが、本作品は角川文庫収録に際して、大幅に加筆されています。
創作子どもSF全集版では比叡山の回転展望台でドクター・ルウと対決後、敗北したルウはあっさりと負けを認めて引き上げます。その後世界の少年エスパーがエスパー戦隊を結成するというニュースが飛び込んできて終わりとなります。
「がんばれ、少年エスパー戦隊。世界じゅうのなかまと手をつないで、明るい未来をきずいていこう。」
少年エスパー戦隊が活躍する話ではなく、結成するまでの話だったのです。ドクター・ルウもいやに諦めが早いし、続編は書かれたのかと思いました。それが文庫版では続きがあったので嬉しいことです。
角川文庫版では設定が少々変更されています。南山教授はアメリカのデューク大学でライン教授から超心理学を学び、その時ドクター・ルウと親友だったということになっています。
それから文庫版では良太に弟・ケンぼうの他にもう一人、語学の天才の妹・ひろ子がいることになっています。
（亜矢子とひろ子の女の子二人がいるから正しくは「少年少女エスパー戦隊」だ）
そしてドクター・ルウの祖国は、国土社版では「チョンホニア国」ということになっています。「チョンホニア」とは一体何じゃらほい。いかにもマンガ的で実在しそうにないネーミングです。ところが角川文庫版では「ソラリス連邦」ということになっています。原子力潜水艦の名前が「ナロードノスチ号」と言ったり、手下のエスパーの名前も何となくロシア語ぽい響きで、ソ連をイメージさせるものとなっています。ところがこの物語の世界ではソ連はソラリス連邦とは別に存在することになっています。ロシア語圏の別の国ということなのでしょう。
……ということで、少年少女エスパー戦隊は比叡山の回転展望台や父島や東海村の原子力研究所などを舞台にドクター・ルウ率いる悪の超能力軍団と戦います。いくら何でも訓練もしていない子どもが専門の訓練を受けたプロの超能力者軍団に勝つというのはおかしい気がしますが、それは言わない約束です。また、観光施設や研究所で戦う時に一般の人はいなかったのか、という気もしますが、それも言わない約束です。まあそういった細かい突っ込み所は色々とあるのですが、そんなことは気にせずに大らかに楽しむのが本作品の楽しみ方です。
そしてアッと驚く術の使い手だった南山教授。
＜超能力時空逆流れ！＞
とは一体どんな術なんでしょうか。サイボーグ００９の加速装置よりすごそうなネーミングです。よく分からん術ですが、とにかくすごい術なのでさすがのドクター・ルウもあっさりと引き上げるしかなかったくらいです。
それにしても学生時代の親友にも隠していた超能力！能ある鷹は爪を隠すですね。能力をひけらかさない南山教授だからこそ勝利を得ることができたのです。でもなんかご都合主義過ぎるような……？
なお、超能力犬の名前が「ビルケ」というのは、ベリヤーエフの「ドウエル教授の首」を思い出させていい感じ。
科学にとってもSFにとっても自由な想像ができた時代！
想像せよ、現代の子どもたち、そして大人たち！
合成人間ビルケ（旧題：合成人間）
http://sfclub.sakura.ne.jp/iwasaki18.htm
それにしてもドクター・ルウのスカウトの方法はまずかった。脅してはダメでしょう。ここは騙すところです。
『すばらしい超能力時代』に登場する悪の宇宙人・ヤーノフスキーも超能力を持つ子ども達を騙して集めていました。
２１世紀は科学と超能力の時代！？
当時のバラ色の未来観を表現した名作ジュヴナイル！！
すばらしい超能力時代 北川幸比古
http://sfclub.sakura.ne.jp/sf08.html
ところで、前半の山場で比叡山の回転展望台が舞台となります。これは実際に存在していた展望台で、今でも回転はしていないようですが現存しているようです。
さて、世界の危機を救った少年少女エスパー戦隊！まるで明智探偵と少年探偵団です。彼らの今後の活躍が気になります。その後続編は描かれなかったのでしょうか？
（2023.01.14）
【追記】
本作品は1990年にてのり文庫から復刊されています。これは国土社の創作子どもＳＦ全集版に準拠しています。ただ、ドクター・ルウの祖国が「北チョゴリア国」ということになっています。
★少年エスパー戦隊 (てのり文庫)
豊田有恒(著) 米田裕(イラスト) 国土社 1990年
少年少女・ネタバレsalono（ネタバレ注意！）
哲学ＳＦ白熱教室！？【植民星アルテアⅣ】ネタバレ検討会
https://sfklubo.blog.jp/archives/17669353.html
↑角川文庫版に同時収録された問題作の感想です。
編集後記＆参照リンク集＆コメントコーナーなど
↑ご意見ご感想お寄せ下さい
【トップページに戻る】
２０世紀少年少女ＳＦクラブ
【ブログもやってます】
◎ＳＦ ＫｉｄなＷｅｂｌｏｇ
◆快眠・早起き朝活・健康生活ブログ
☆少年少女・ネタバレsalono（ネタバレ注意！）
【Twitterもやってます】
★市井學人(２０世紀少年少女ＳＦクラブ）
