20世紀少年少女SFクラブ > 記事一覧 > SFこども図書館/SF世界の名作 > 【27世紀の発明王】まさしくこれが僕たちの未来のイメージだった!

【27世紀の発明王】まさしくこれが僕たちの未来のイメージだった!

27世紀の発明王 (冒険ファンタジー名作選(第1期)) - ヒューゴー ガーンズバック, 大塚 あきら, 福島 正実
27世紀の発明王 (冒険ファンタジー名作選(第1期)) – ヒューゴー ガーンズバック, 大塚 あきら, 福島 正実

―――――☆―――――☆―――――☆―――――☆―――――☆―――――☆―――――☆
【あらすじ】
 2660年9月1日。ニューヨークに住む世界的に偉大な発明家のラルフ124C41+はテレビ電話で友人のエドワード350B11と話している途中、混線により偶然スイス山中に住むアリス212B423とつながり、雪崩の危機から救うこととなった。ラルフに感謝したアリスは父親と共にラルフを訪れ、しばらく滞在することになった。
 アリス達を観光案内するラルフ。
 しかしアリスにつきまとっていた二人の男の憎しみを買うところとなったのである。
 やがて二人は結託してアリスを誘拐する!追うラルフ!果たしてアリスを取り戻すことができるのでありましょうか!?
―――――☆―――――☆―――――☆―――――☆―――――☆―――――☆―――――☆

 この本、小学校の図書室にありました。
 原題は『Ralph 124C 41+ 』らしいのですが、これを「27世紀の発明王」と訳した福島正実さんはすごいですね。
 他に『2660年のロマンス』『宇宙追撃戦』という邦題もあるようですが、「27世紀の発明王」はずば抜けています。
 小学生時代の私もこのタイトルで面白そうと思って読んだのですが、単純すぎるストーリーで拍子抜けしたものです。期待が大きかっただけにガックリ感は大きかった。
 その思い出があったので、SFこども図書館を集中的に読んでいる現在も再読が後回しになっていました。
 巻末の解説によると、ガーンズバックは技師や経営者として活躍しながらラジオ技術のことを伝える雑誌を創刊したようです。
 あるときその雑誌の記事に穴が開き、急遽自らSFの連載を始めたのが本作品だそうです。
 技術的な雑誌に連載された作品だから、啓蒙的な内容になるのは自然なことです。
 よって本作品は予想される未来の技術や社会を描くことがメインで、誘拐や追跡というのはアクセントのようなものだったのでしょう。
 1911年当時に本作品に描かれる未来社会を想像することはすごいことです。
 そのためガーンズバックは「アメリカのジュール・ベルヌ」「SFの父」と呼ばれ、彼の名前に由来する「ヒューゴー賞」があります。
 
 本作品でラルフに敵対する二人の男のうち一人は火星からの留学生リザノールCK1618です。

「その留学生が、なぜラルフをにくんでいるのか――それは、まだ、まだ、だれにもわからなかった。」

と書かれていますが、最後までその原因は明かされませんでした。福島先生、伏線回収を忘れたのでしょうか?
 ウィキペディアによると、彼もアリスを愛していたようです。
 
 ちょっと分からないところがあって、アリスを誘拐したフェルナン60O010もリザノールも宇宙線の外から窓越しに麻酔銃や光線銃で撃たれて眠ったり死んだりしていますが、宇宙船にはダメージはありません。当時の麻酔銃や光線銃は宇宙船を透過する技術があったのでしょうか。それとも、これは子ども向けに翻訳した福島先生の改変なのでしょうか?
 
 また、冒頭でラルフはエドワードに翌日訪ねて来るよう約束していますが、本書ではエドワードの再登場はなかったことが気になりました。

……とケチつけるようなこと書いてきましたが、なかなか楽しめました。確かな未来想像力に基づいた作品なので、ヴェルヌの作品を読むような楽しみがありました。デビュー作でこれだけのものを描くとはやはりSFの父と言われるだけのことあります。小学生時代の偉そうな感想を撤回して再評価させて頂きます。

 今回再読して気付いたのは、真鍋博さんの挿絵の素晴らしさです。
 私は子どもの頃、あまり絵に興味なくて、文字で書かれている内容ばかり気にしているような子どもでした。
 だから真鍋さんの挿絵も当時はあまり見ていなかったし記憶に残っていなかったのですが、今回読んで、一枚一枚が素晴らしい作品だと実感しました。
 この挿絵に描かれた世界こそ、当時の私達が共有していた未来社会のイメージだったのではないでしょうか。
 本書は2003年に冒険ファンタジー名作選として復刊されましたが、その時は挿絵が変わっています。新旧の挿絵を見比べるのも面白いのではないでしょうか。(2025年10月)
(なお、アイキャッチ画像は こちら より拝借致しました)

ラルフ124C41+ 2版 (ハヤカワ・SF・シリーズ 3123) - ヒューゴー ガーンズバック, 川村 哲郎
ラルフ124C41+ 2版 (ハヤカワ・SF・シリーズ 3123) – ヒューゴー ガーンズバック, 川村 哲郎

編集後記&参照リンク集&コメントコーナーなど
↑ご意見ご感想お寄せ下さい

【トップページに戻る】
20世紀少年少女SFクラブ
【ブログもやってます】
SF KidなWeblog
快眠・早起き朝活・健康生活ブログ
少年少女・ネタバレsalono(ネタバレ注意!)
【Twitterもやってます】
三丁目の書生(20世紀少年少女SFクラブ)
(なお、当サイトはサイト維持の一環としてアフィリエイトを利用しています。)

おすすめ記事

サイト内検索

ligiloj

arkivo

anoncoj

SNS

↓とりあえずランキングに参加しています

ページTOPに戻る