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海竜めざめる 星新一訳新旧

 

 

ボクラノエスエフ版とハヤカワSF文庫版を読み比べてみました。
ボクラノエスエフ版には巻末に

 

初訳から年月が経過していることに鑑み、故・星新一氏の著作権継承者である星加代子さんのご了解のもと、大森望さんにご協力いただき、あらためて訳文と原文を比較対照したうえ、訳文の味わいを損ねない範囲で、最小限の改訂をほどこしました。

 

という注釈があります。
その通りで、大森さんの改訂がかなり入っていて印象は大きく変わります。
何しろ物語の語り手が「私」から「ぼく」に変わっています。
それだけでも大きな変更です。
星新一さんは解説で書かれています。

 

「訳文については、なるべく読みやすいようにと心がけた。そのため、本来は息の長いウインダムの文章のムードを、いくらかそこねたかもしれない。」

 

そもそものウインダムの文章は読みにくいのだと伺われます。
それを読みやすく訳した星版をさらに大森氏が読みやすく改めたのだと思います。
言葉は少しづつ変わっていきます。
星さんが本書を訳した当時と現代の日本では、かなり日本語も変わっていると思います。
(新聞紙で使われている活字も大きくなったし、表現も変わっているはずです。)
例えば、物語の最後でワトソン夫妻が南の温かい地方に引っ越しを決意する際の表現です。

 

フィリスも同意し、あらたまった口調で言った。
「いよいよ幕がおろされてしまうのね、マイク・ワトソン。でも、幕がおりきってしまうまでは、できるだけ幸運への努力をつづけましょうね」(星版)

 

 

フィリスも同意し、シャーロック・ホームズを引用した。
「『いちかばちかだ、ワトソン、いちかばちかの大ばくちだよ』ってところね。でも、運をいくら貯めこんでてもしかたないわ。使うときは使わなきゃ」(大森版)

 

これから『海竜めざめる』を読まれる皆様には、
文体が現代に合うようにアップデートされ、活字も大きくなり、長新太さんの挿絵もあるボクラノエスエフ版をお勧めします。
そして、今回の復刊で仲間外れになってしまった感のある斎藤伯好さんの訳ですが、星新一さんは訳者あとがきに
次のように書かれています。

 

「なお、翻訳に際しては斎藤伯好氏にひとかたならぬ助力を得た。心から感謝するしだいである。」

 

星新一版(ハヤカワ・SF・シリーズ )は1966年発行、斎藤伯好版(岩崎書店SFこども図書館)は1976年に発行されています。
星新一の翻訳を手伝った斎藤伯好さんが10年後に児童向け翻訳を出されたということなのでしょうか。
ともかく、星新一の訳文にも斎藤伯好さんの助力が入っているので、このボクラノエスエフ版は、
星新一 + 長新太 + 斎藤伯好 + 大森望
さらに、今回の復刊企画に携わった多くの方々の仕事の結晶であります。

 

しかしこのボクラノエスエフというレーベル、私は今回初めて知りました。
朝日新聞を購読していて、本の広告・文化面・土曜書評欄(以前は日曜)をしっかり読んでいるつもりだったのですが、
掲載されていたのでしょうか。
潜在的な読者になり得る私に広告が届いていなかったのです。
(もっとも、日曜読書欄は読むのは時間がかかるので速読のできない私はためていって少しづつ読んでいます。
そしてあまりにたまり過ぎて仕方なくたまった分を捨てたことが何度かありました。
その読まないで捨ててしまった分の中に記述があった可能性があります。)

 

  深海の宇宙怪物 (SFこども図書館 3)
  『海底の怪』国松文雄訳 元々社〈最新科学小説全集 第4〉
  ボクラノエスエフ 近い過去に潰えていた夢

 

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