『海底の怪』国松文雄訳 元々社〈最新科学小説全集 第4〉
★海底の怪 (1956年) (最新科学小説全集〈第4〉) 挿画 後藤可与子
細かい字で2段組・200ページ。
カラー口絵や挿絵(6枚)も入っています。
ハヤカワ以前にこんな本格的なSF叢書が発行されていたのですね。驚き。
ただ、さすがに今となっては字は細かいし訳文も読みにくい。
例えば、冒頭の書き出しはこんな風になっています。
「私はたしかな目撃者だし、あなたもたしかな目撃者だ。実際、人間はみんな自分免許でそれぞれ自分はたしかな目撃者だと信じている。このため同じ出来事から、ちがったいろいろの考えが出てくるので、まったくおかしいほどだ。七月十五日の夜に見たことについて、ぴったりと話の合う人間といえば、フィリスと私だけだ。」
他の部分で読み比べた部分 は、このようになっています。
フィリスも同意した。
「先の長い話になりましょうよ、ワトソン。目的を達するまでには長くかかりましょうね。でもそうしなかったら、幸運は掴めませんわね?」と彼女が言った。
意味が分かりづらいですね。
星新一さんによるとウインダムの文章は「息が長い」ということです。
整理しないでそのまま訳せばこんな風になるのでしょう。
会話の文体も立場役割ごとの使い分けがうまくできていないような気がします。
ウィキペディアによると、この全集は訳文に難があるという説があるようです。
確かにそんな説が出るのもむべなるかなと思います。
ウィキペディアの記述によると、本作品はイギリス版とアメリカ版で結末が違うようです。
本書の結末は星新一版や斎藤伯好版と同じく、アメリカ版に準じています。
巻末解説「ジョン・ウィンダムについて」は3ページ。
訳者がウィンダム自身に消息を求めるた手紙に対しての返信の紹介が主。
ウェルズの『宇宙戦争』『タイムマシン』に影響されたそうです。
本作品について訳者は
「思想と本当にいい著述を鼓舞することによって、科学小説を成熟に導こうとするウィンダムの主張をさらに一層推進したもの」
と述べています。
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