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12年前の悪夢に出てきたお姉様と運命の再会!【吸血鬼カーミラ】

 先月『フランケンシュタイン』を読んだから今月は『吸血鬼ドラキュラ』……と思ったけど吸血鬼ものでは『吸血鬼カーミラ』の方が先に描かれたらしいので先にこちらを読んでみました。
 しかしこの作品、タイトルでネタバレしています。
 カーミラの正体が判明するところがクライマックスのはずなんですが、読者にはカーミラの正体が最初から分かっているのです。だからこのタイトルは吸血鬼が登場してどんな事件が起こり結末はどうなるのかということに焦点を当てたタイトルのつけ方ですね。
 原題は「Carmilla」らしい。確かにこれだとカーミラの正体のネタバレはありません。しかしタイトルとしては素っ気なく、インパクトとしてはやはり『吸血鬼カーミラ』の方が大きいし読みたくなりますね。
 それならネタバレしないキャッチーなタイトルを考えてみましょう。
『美少女カーミラの秘密』『私を愛した女(ひと)』やはりこんなタイトルをつけたいし読みたい。
『私を愛した女(ひと)は棺桶の中で殺された』ここまで言うとネタバレになります。
『美少女カーミラの思い出』これは物語ラストに関連させたタイトルです。

 原作の完訳は創元推理文庫のレ・ファニュ短編集(7編収録)の中の一つ。そんなに長くはない短編です。
 だから子ども向け翻訳もそんなに大きく改変や省略があるわけではなく大まかに原作に沿ったものとなっています。
 
 カーミラは12年前にローラの夢に出てきたということですから、12年も前から狙っていたのでしょうか。なぜ12年間待っていたのでしょうか。吸血鬼の時間の概念が分かりません。しつこく付け狙うというのだから、ストーカーですね。日本的感覚から言うと、「ヒモ」でしょうか。ニュースでも時々変な人に洗脳されて貢がせられることになった人のことが報じられることがあります。
 吸血鬼の場合は最終的には殺されてしまうのだから「寄生虫」のようなもんですね。
 戸川純には冬虫夏草を歌った『蛹化の女』という曲があります。
 ヒグラシを始めとしたセミ類には色々な寄生虫があるようで、検索すると色々ショッキングな例が出てきます。
 吸血鬼はまさしく人間に寄生する寄生虫のようなものですね。
 ヨーロッパには各地に吸血鬼伝説があるらしい。そんな伝説があると墓に土葬するのが怖くなりますね。火葬が普及したのはそういうわけもあったのでは?


 
 さて、物語について。カーミラが色々語る思い出話の中に、人間時代に初めて吸血鬼と知り合った時のことや吸血鬼に付きまとわれて病気になった頃のことを思わせるものがあります。しかし人間らしさを忘れてローラを同じ目に合わそうとしているのは悲しいものがあります。
 最近、アメリカのゾンビをテーマとしたドラマが人気あるそうです。ゾンビも吸血鬼と似たようなものですね。
 ウィキペディアには「作中では明かされない残された謎もある」と記述があります。
 そういえば、カーミラの母親やカーミラ親子の執事や馭者も登場します。また、馬車の中にはもう一人、黒い肌の女性もいたそうです。これらの面々は何だったのでしょうか。その後どうなったのでしょうか。
 カーミラの母親はスピエルドルフ将軍に近付く際、将軍の過去について詳しく知っていたようです。これも不思議なことです。
 吸血鬼は人間の常識を超えた超自然的な存在なのだから、全てが人間の常識で解明されないのも仕方ないことなのですが。ここがミステリー小説と怪奇小説の違いです。

  
女吸血鬼カルミラ (ポプラ社文庫―怪奇シリーズ (33))
榎林哲 (訳) 村井香葉 (イラスト) ポプラ社 (1985/6/1)
38字×13行×176P=86,944字
https://booklog.jp/item/1/4591020002
 
  
女吸血鬼カーミラ (フォア文庫)
中尾明 (翻訳) 田中槙子 (イラスト) 岩崎書店 (1993/1/1)
43字×14行×181P=108,962字
https://booklog.jp/item/1/4265010857
『フランケンシュタイン』で知った朝日ソノラマの少年少女世界恐怖小説シリーズと同じ中尾明訳版。
 
  
『吸血鬼カーミラ』(集英社 子どものための世界文学の森35)
百々佑利子 (翻訳) 粕谷小百合 (イラスト) 集英社 (1996/7/12)
33字×12行×126P=49,896字
字が大きめで挿絵も豊富で文字数が少な目かと思うのですが、翻訳が良いのかあまり省略を感じさせません。カラーの挿絵も豪華できれいです。
このシリーズの第7巻『海底二万里』(旧版:子どものための世界名作文学7)を子ども時代に読んだことあります。
  
  


吸血鬼カーミラ (創元推理文庫 506-1)
平井呈一(翻訳) 東京創元社 (1970/4/15)
43字×19行×118P=96,406字
 
 平井呈一さんは文人の系譜に属する方で、さすがに訳文も格調高い。
 比較的昔の翻訳ですが、特に古臭さを感じさせません。
 しかも、主人公ローラの父親やスピエルドルフ将軍といったお年寄りのセリフや流しの芸人に関する描写の節回しに古き良き味わいがあって良い。
「とにかく、お母さまから指示がなくてもだ、ここを去るなんちゅうことを考えちゃならんことだけは、たしかじゃ。わしのほうだって、あなたと別れるについてはいろいろこれで心配もあるんじゃから、そうやすやすと承知はできんよ」
「こりゃまあ、名前もろくすっぽ知らんで若い女をあずかるなんて、とんだヘマなことをしたわいと、改めて自分のドジさかげんを思い知らされたわけだが」
……なんて、微妙に古さを感じるお爺ちゃん言葉に味わいがあります。
 また、ローラの語る地の文にも
「スピエルズベルヒ先生は、そこから馬にのって暇を告げると、そのまま森のなかを東のほうへと、パカパカ行ってしまいました」
なんて表現が出てきます。
 創元推理文庫版は字が細かくて読みにくいことは読みにくいのですが、本書は他にも短編が6編も収録されているのでお得ではあります。


吸血鬼カーミラ (STORY REMIX)
清水みち・鈴木万里(翻訳) 徳吉久 (写真) 大栄出版 (1996/4/1)
25字×32行×143P=114,400字(横組み)


女吸血鬼カーミラ
長井那智子(翻訳) にしざかひろみ (イラスト) 亜紀書房 (2015/1/24)
40字×16行×159P=101,760字

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