マグニフィセント・エイト 宇宙の開拓者【夜明けの惑星】
夜明けの惑星 パイパー作 福島正実・訳 依光隆・絵
集英社ジュニア版世界のSF3 1969年9月
23字×16行×2段×79頁=58144字
【あらすじ】
惑星タリーシュに向かう宇宙移民団は故郷の惑星ドルーシャを出発して5年もの宇宙飛行を続けてきた。しかしタリーシュに間もなく到着という時、隕石群に遭遇し、大爆発を起こす。そして命からがら脱出した8人だけがタリーシュに到着することができたのである。
慣れない環境で物資も不足するなか、8人は過酷な開拓生活を始める。その惑星には猿のような原始人(毛深族)が住んでおり、彼等との戦いは避けられない運命であった。
第一世代の8人は一人また一人と落命していくが、また一方で新たな生命も誕生していくのであった。
そして最後に明かされる衝撃の事実!
何とタリーシュとは( )であり、ドルーシャとは( )なのであった!!
【感想:マグニフィセント・エイト 宇宙の開拓者】(ネタバレ注意!)
本作品を読んで、トム・ゴドウィンの『宇宙の漂流者』(宇宙のサバイバル戦争)を思い出しました。
六世代200年にわたる広大なスケールの物語!
【宇宙の漂流者】
https://sfclub.sakura.ne.jp/roman23.htm
宇宙のサバイバル戦争 [SF名作コレクション(第1期)] (SF名作コレクション 6)
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アメリカは国そのものが開拓してできた国なので、本作品のような開拓は民族的な記憶として実感できるのではないでしょうか。
日本でも歴史を顧みると、北海道や満州を始め、開拓生活に従事された方々がいらっしゃったはずです。アントニオ猪木さんもブラジルに移住して過酷な労働を強いられたということです。
過酷な生活で一人ずつ仲間が死んでいくというハードな展開は、『宇宙の漂流者』を思わせます。
世界観も時代的にもかなりスケールが大きな作品なのですが、原作は短編小説で、講談社文庫で30ページちょっとの分量です。かなり密度の濃い凝縮された作品です。
千億の世界 海外SF傑作選
『創世記』 浅倉久志・訳
1975年7月
43字×19行×34頁=27778字(挿絵スペース含む)
講談社文庫に収録された(おそらく)完訳版(浅倉久志訳)とジュニア版・世界のSFに収録された福島正実さんの翻訳を読み比べてみると、内容や展開に関してはほとんど変わりません。原作が短編なのでほとんど完訳で収録できたのでしょう。のみならず、メンバーが落命するシーンでは、原作では軽く触れられているだけのところを福島版では詳しい状況描写があります。これは福島正実さんの創作でしょうか。単なるナレーション死するよりもそのキャラをリアルに感じることができます。文字数を見ると、福島版の方が多いのかもしれません。(もちろん、挿絵のスペースがあるので単純計算通りにはいきません。)
子ども達にも分かりやすく読みやすく書かれた福島正実訳版は滑らかな文章で、大人が読んでも読みやすいと思います。「毛深族」というのもいい訳です。また、タイトルを『夜明けの惑星』と翻訳するのもいいと思います。昔の洋画のタイトルみたいです。本書を子ども時代に読んでいたら絶対に好きになっていたであろうし、思い出に残っていただろうと思います。また、大人になってからも読むに堪える名作だと思います。
本作品の完訳版『創世記』が収録された講談社文庫『千億の世界』には、福島正実さんの解説が収録されています。これがまた的確で、SF入門の様相を呈しています。
その解説によると、本作品は『第二紀人類テーマ』(現在の人類は地球で発生し進化したオリジナルの人類―第一紀の人類ではなく、その後継者である、というアイデアに基づいたSF)を扱っているということです。
このアイデアで書かれた小説は実は決して少なくはない、と福島さんは書かれています。
え?そうなんですか?SF知識の乏しい私にはほとんど思いつきません。
私の残された時間はどれくらいなのか分かりませんが、今後色々と読んでいきたいですね。
さて、福島訳版では描かれていなくて完訳版で描かれている描写があります。
ゼルダー・グラブ中尉が第七隔壁の船倉のカルヴァー・ダード大佐を呼びに来た時、ダードは片手をアナリア(看護師:後にダードと結婚)の腰に回し、もう一つの手をヴァーニス(機械技師:後にグラブと結婚。後に発狂する)の肩に置いていたのです。
現在の視点から見ると、セクハラですね。
当時の世相はこういう行為が当たり前だったのかもしれないし、或いは、SFは大人が読む大衆的な作品だったので、あえてこういうシーンを描いていたのかもしれません。
タリーシュとドルーシャの正体、そして8人の移住者の子孫と彼らと敵対した毛深族の正体が最後に明かされます。
『創世記』という原題もあり、薄々気付いていたのですが、やはりそうだったのですか。しかしドルーシャの正体は意外でした。5年も宇宙旅行していたということなので、かなり離れた距離かと想像していたのですが、意外と近い位置にあったのですね。
まあ超光速やワープを使っているわけではなく普通の宇宙船なので、5年くらいかかってもおかしくはない話です。(2024.0227)
(なお、表紙及びアイキャッチ画像は こちら のサイト様より拝借致しました。)
テンプル・トラブル H・ビーム・パイパー原作 Temple Trouble 翻訳版 – H・ビーム・パイパー, 美藤志州
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