バウンティ号の反乱 その他

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学研 少年少女ベルヌ科学名作全集 第8巻

 

『難破船(グラント船長の子供たち)』について、

 

感想を書きました。

 

https://sfklubo.net/cat_03/52/

 

このシリーズの方針として、表題のヴェルヌの作品に関するその他の読み物が収録されています。
それらについてもなかなか興味深い読み物なので、感想を述べてみます。

 

 

 南太平洋の二つの国  岡田日出士(文)

 

 

オーストラリアとニュージーランドの歴史と地理について、豊富な写真と共に紹介。

中学時代の地理の授業を思い出しました。

私の中学時代までの読書の傾向は、お話の本や歴史の本に偏っていて、地理だとか自然科学とかいわゆる図鑑類には全く関心ありませんでした。
だから初めて地理の授業を受けた時は面食らったものです。
今思うと、幅広い分野の本は読んでおくべきだったと思います。
そういう意味で、物語の本にこういった自然に関する読み物が収録されているのは素晴らしい編集方針だと思います。
子ども時代にこの全集に巡り合わなかったことは残念です。

「(オーストラリアの原住民は)ダンビエが見たように、黒人でした。
この黒人は、イギリス人が移住してきはじめてからは、ぐんぐんとへってしまったし、そのちかくの島々にいる黒人たちとはからだつきがちがっているので、どういう人種であるかは、はっきりとはわかっていません。」

「また、大陸の南にあるタスマニア島には、オーストラリアとはべつの人種の土人がいました。だが、この島にうつってきたイギリス人にたいして、あまりいうことをきこうとしなかったし、すがたがみにくいというので、イギリス人は「黒人狩り」をおこない、かたっぱしからころしていきました。」

「1860年には、さいごのひとりが死んで、地球上からタスマニア人種はすがたをけしてしまったのでした。
もっとも原始人にちかい人種を、こうしてほろぼしてしまったのは、人類学のうえでも、ざんねんなことです。」

残酷なことがやさしい言葉でサラリと書かれています。
当時はこんな記述は結構あったものなのでしょうか。

 セルカークの冒険

セルカークとは、あの『ロビンソン・クルーソー』のモデルとなった人物だという前提で書かれています。
彼はかなりの乱暴者で船員になったそうですが、当時の船員とはそんな連中ばかりだったようです。
何せスペインやフランスの軍艦を襲って積み荷を奪うなんて海賊まがいのようなことをしていたくらいですから、当時の船員と海賊は同じようなものだったのでしょう。
大航海時代に未知の海を航海した冒険家もそのような連中でした。
そういう連中の活躍のために歴史が進んでいったという面もあるのです。
この物語では、ダニエル・デフォーがセルカークを訪れて取材を行うシーンが描かれています。
但し現在では、セルカークが『ロビンソン・クルーソー』のモデルだったという説に否定論もあるようです。

 バウンティ号の反乱  

わずか13ページほどの短い物語ですが、非常にドラマチックで密度の濃い物語です。大長編小説を読んだ気分。
戦艦バウンティ号で反乱が起こり、船長以下18名は小さなボートに乗せられて追放される。
船長以下は無事陸地にたどり着けるのか?
一方、バウンティ号の方は……?

18世紀末に現実にあった事件のようで、何度か映画化されているようです。

ボートで流された船長側も、二等運転士のクリスチアンを中心とした反乱側にもドラマがあります。

本作品は漂流する船長たちを主に描いていますが、反乱側にも様々なドラマがあったようです。

これはぜひ映画を見てみたい。

また、ヴェルヌには『チャンセラー号の筏』という作品がありますが、こちらはフランスのメデューズ号の遭難をモデルにしているようです。

航海技術が十分でなかった時代、航海は命がけだったのですね。

そういった人々の冒険があったからこそ、人類の進化があったのですね。

    

 ビーグル号航海記

人類史上余りに高名な著作。こういう記念碑的学術書を読めるとは素晴らしい編集方針です。

 

3人のフェゴ原住民をイギリスに連れ帰り、3年間教育を受けさせて元の国に返した顛末を中心につらつらと抜粋。

 

進化論に関する記述はほとんどありません。

 

アレキサンダー・セルカーク 1676~1721

バウンティ号の反乱 1789年

チャールズ・ダーウィン 1809~1882

ジュール・ヴェルヌ 1828~1905

 

ダーウィンとヴェルヌはほぼ同時代人なんですね。ヴェルヌはダーウィンの進化論についてどう思ったのでしょうか。

ダーウィンがビーグル号で航海したのは、さすがにセルカークやバウンティ号の時代より後の時代でしたが、まだまだ航海に危険が伴う命がけの時代でしょう。

このような身体を張った命がけの航海と冒険があったからこそ、新しい学説を立てられたのではないでしょうか。
(2017年08月31日 )

      

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