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ジュール・ヴェルヌの空飛ぶ戦艦 主人公の名はロビュール?


   ★空飛ぶ戦艦 (少年少女ベルヌ科学名作4)
    訳:福島正実 挿絵:池田龍雄 1964年初版/1968年再版

【あらすじ】
 アメリカ・フィラデルフィアの気球愛好家の集まり・ウェルドン協会の例会で白熱した議論の最中、ローバーなる技師が発言を求める。
 彼は気球など時代遅れであり、これからは飛行機の時代だと演説して気球愛好家達を挑発。
 会は大混乱に陥り、その混乱に乗じてローバーは忽然と姿を消す。
 閉会後、ウェルドン協会のプルーデント会長とエバンズ書記は帰宅の途中、ローバー一味に拉致される。
 彼らはローバーの発明した飛行機【アルバトロス号】で世界一周見学の旅に付き合わされることになる!!

【感想】
 気球愛好家の団体の会長と書記が飛行機に乗せられて空の旅に付き合わされます。
 なかなか快適な空の旅です。
 空気を読む日本人の感性としては思わぬ僥倖に感謝して空の旅を大いに楽しみたいところなのですが、この二人は違うようです。
 何せ二人は気球愛好家であり、今後の飛行技術は空気より軽い飛行船にするべし派だったのです。
 ところが謎の人物が発明した空気より重い飛行機の圧倒的性能を見せつけられた二人は頑固さ故認めることができず、反抗しまくるのです。
 一方、飛行機の乗員達も飛行船愛好家達を見下しています。
 そのため、客人である二人と飛行機の乗員達の間は友好的な関係にはならず、ギスギスした雰囲気です。
 これが『海底二万里』との違いです。
『海底二万里』ではネモ船長達に助けられた3人の客人達はネモ船長達に感謝し、友好関係を築いて交流します。
 ところが本作品では客人達は素晴らしい経験をする幸運に恵まれながらこの機会を生かそうともせず、逃亡や飛行機の破壊を考えています。
 これはなかなか不幸な出会いですねえ。
 また、ネモ船長に関してはさる国の王族に生まれて……という人物設定があり、悩める描写もありました。
 ところがローバーに関してはそういった人間的な描写は一切ありません。
 最後にヴェルヌは種明かしをしています。
 
「ローバーは、未来の科学そのものなのだ。いや、あすの科学、やがてきたるべき科学そのものなのである!」

 つまり、時代より進み過ぎた人と時代の多数派との齟齬がテーマなんですね。
 ローバーは時代より進み過ぎたために理解されず受け入れられなかったのです。
 だから物語は険悪な雰囲気で進んでいたわけなんです。
 でもローバーももっとうまく飛行機をプロデュースしていたら受け入れられていたかもしれません。
 ローバーにとっても科学にとっても不運な展開です。

 さて、物語の展開についてですが、飛行機アルバトロス号の旅は快適そのもので、あまり危なっかしいシーンはなかったように思います。
 例えば『アフリカ横断飛行』での気球の旅と比べると大きく違います。
 気球はまだ地面に近いので色々な危機がありましたが、アルバトロス号は文字通り高見の見物です。
 嵐に巻き込まれて南極点まで連れて行かれたのが唯一の危機でしょうか。
 アルバトロス号は現在の飛行機よりも高性能で、ヘリコプターのように垂直離着陸やホバリングができるので、まるでオスプレイです。
 飲食物や燃料の補給もほとんど必要ないのですから、ほとんど永久機関化しています。
 ところで、アルバトロス号ではトイレや風呂はどうなっていたのでしょうか。
 ヴェルヌの作品にはそういった描写はないのですが、私としては気になります。
 
『神秘の島』住居は風呂・トイレ付き?
  https://sfkid.seesaa.net/article/453717729.html
  
 ところで、アルバトロス号が日本を訪れるシーンがあります。
 富士山を越えてから江戸に入ったという描写になっています。
 しかし、集英社文庫版の巻頭のコース図を見ると、日本へは北から入り、江戸から西日本へ向かっています。
 このコースなら富士山より先に江戸に入るのではないでしょうか。

 さて今回、福島正実訳版と手塚伸一訳版を読み比べてみました。
 福島訳版は抄訳とはいえ、物語の骨子を損なうことなくうまく翻訳していると思います。
 大きな違いは、主人公の発明家の名前が「ローバー」となっていることです。
 普通この作品は『征服者ロビュール』と訳されることが多いですね。
 確かに綴りを英語読みすると「ロビュール」となるのは分かりますが、フランス語読みもそうなんでしょうか。
 フランス語では単語の語尾は読まないのではないでしょうか。
 本作品は福島訳の他にも複数の児童向け抄訳があります。
 それらの抄訳では主人公の名はどう表記されているのでしょうか。
 ところで、フランス語のできる皆様、フランス語では主人公の名はどう読むのでしょうか。

 あと、登場する飛行機の名前は手塚版では「あほうどり号」ですが、福島版では「アルバトロス号」となっています。
 何でも日本語化する必要はありません。
「死の翼アルバトロス」「アルバトロス殺法」が「死の翼アホウドリ」「アホウドリ殺法」だとおかしいでしょう。

 

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