浦沢直樹『20世紀少年』 2020年の新解釈(ネタバレ注意!)
当HPは、2001年4月にAOLのHPスペースにて産声を上げました。
このHPを運営していく上で、私には避けては通れない作品がありました。
それは浦沢直樹『20世紀少年』です。
このHPのタイトルのネーミングの由来は以下のページで述べていますが
(このサイトについて)
(このサイトのタイトルについて)
https://sfklubo.net/outline/
作成後に似たようなタイトルのマンガ『20世紀少年』が存在していたことに気付きました。
知らなかったとはいえ紛らわしいタイトルのHPを作成して検索結果を混乱させ、検索していた方々に迷惑をかけてしまったことについて申し訳ないと感じていました。
同時にいつかはこの作品に挑戦してみなければと思っていました。
しかしマンガとはいえ膨大な分量なので、読むには勇気がいることでした。
そしてようやく意を決して2020年の6月から7月にかけて読了することができました。
(夜寝る前に読むと止まらなくなって寝不足になるので読むのは計画的に行わないといけません。)
これはなかなか深い作品で、読んだ者同士で色々と語り合いたいし、その価値ある作品だと思います。
実際、作品連載中から愛読者の間で色々と語り合われていたようです。
リアルタイムでその輪に加われなかったのは残念なことです。
ネットを検索すると当時の議論が当時の熱気そのままで残されています。
連載終了から10年以上たった後にようやく読んだ遅れて来たファンの私も、そういった議論や論考はできる限り読ませて頂こうと思います。
ところで、本作品には多くの謎というか回収されていない伏線や矛盾点が多いと言われています。
〝ともだち”の正体については、作者の浦沢さん本人が「カツマタ君」にするつもりだったと言っているので、カツマタ君に間違いないでしょう。
それを知った上で読み直して全ての謎が解明されたのかどうかと。
論考されている方々の意見も百家争鳴です。
ところで私は本作品の連載が終了してから10年以上たった後にようやく読んだ遅れて来た読者です。
当然連載中と社会状況も大きく違っています。
ということは、良きにつけ悪きにつけ連載中とはまた違った読み方ができるわけです。
というか、連載中の読者の皆様とは立ち位置が違うので、同じ読み方ができないわけです。
具体的に述べると、2020年7月現在、世界的に新型コロナ感染症が流行しています。
ということはつまり、ウイルス兵器の恐怖にさらされた『20世紀少年』の世界観がよりリアルに感じられるわけです。
また、『20世紀少年』では独裁政権の恐怖が描かれていますが、これもまた似たような状況になっています。
……と一応2020年の日本及び世界と本作品の類似点を一応述べた上で遅れて来た読者としての私が生意気ながら一つの解釈を提出させて頂きます。
まず、不思議なのは「反陽子爆弾」についてです。
このようなものが本当に実現されるのでしょうか。
ロボットについては天才的科学者・敷島博士が完成させました。
UFO型飛行物体はヤン坊・マー坊が作成しました。
しかしいくら“ともだち”政権とはいえ、火星移住は実現できませんでした。
「反陽子爆弾」はどうなんでしょうか。
このようなものを実験しているだけで大事件です。
どう考えても子どもの想像レベルです。
普通に考えると国連軍がまともに相手にするわけありません。
「反用紙爆弾だって?何バカなこと言ってるんだよ」
と一笑に付すのが普通ではないでしょうか。
ところがなぜか糞真面目に信じて大騒ぎしているのです。
2000年12月31日の“血のおおみそか”事件で死んだと思われていたケンヂやフクベエが実は死んではいませんでした。
後にフクベエを裏切って殺されたと思われていたサダキヨも実は生きていて数年後にひょっこり再登場します。
重要キャラが死んだり生き返ったり都合が良すぎます。
そう考えると、“ともだち”が世界大統領になる過程も不思議です。
まず、暗殺者の狙撃から身を挺して守るということ自体が奇跡に近い。
何度もリハーサルを行っても成功するかどうか分からない綱渡りです。
無事にそれが成功したとしてもそのまま簡単に世界大統領になれるものでしょうか。
世界各国には色々な立場の勢力がいるので普通に考えてもそんなに簡単にいかないというのは常識で分かります。
あまりにもうまく行き過ぎです。
これらの筋書きは、まるで子どもの妄想そのものではないでしょうか。
……そう、本作品は子ども時代の心を忘れない遠藤ケンヂが見た悪夢、と解釈すればどうでしょうか。
時系列があちこち飛ぶのも内容に矛盾があるのもそれで説明がつきます。
2000年12月31日の“血のおおみそか”事件でケンヂは死んだと思われます。
しかし2017年に復活します。
これは思うに、ケンヂが新型コロナのような感染症に感染し、病床でうなされることになります。
似たようなことを少年時代に考えていたなあ。それが現実になったんだ。
そして長年気にしていたカツマタ君のこと。
謝っておくべきだった。
これはカツマタ君にひどいことした罰なんだ。
カツマタ君やその仲間達が僕に復讐しているんだ。
ケンヂの悪夢は続き、症状は悪くなり、一時は危篤状況に陥ります。
それが2000年12月31日の“血のおおみそか”事件なのです。
ケンヂは生死の境目をさ迷いますが、やがて回復に向かいます。
それが2017年の復活なのです。
よく考えれば、ケンヂが言わない限り、ケンヂが万引きしたことは誰も分からないのです。
もし私がカツマタ君だったら、恨むのはケンヂではなく、仲間だった自分を見捨てたフクベエや山根です。
「ケーンヂくーん 遊びましょ」
これは罪悪感にさいなむケンヂが聞いた幻聴なのです。
つまりこれはケンヂの一方的な罪悪感がもたらした悪夢だったのです。
『21世紀少年』のラストの屋上のシーンは、回復直前のかなり状態が良くなった頃に見た最後の夢・ケンヂの願望だったのではないでしょうか。
カツマタ君と和解したら未来の“ともだち”政権の出現もなくなるのです。
……と解釈したのですが、どうでしょうか。
もちろん連載当時には新型コロナ感染症などなかったのですから、この通りであるはずありません。
しかし不気味に2020年の世界を予言している本作品ですから、その世界観を反映してこのように解釈するのも間違いではないと思うのですがどうでしょうか。
まあ夢オチという解釈は一番安直な方法とは思いますが。
何でもかんでも夢オチにしてしまったら思考停止になります。
しかし、本作品に関しては非常に納得のいく解釈とは思うのですが、どうでしょうか。
……と、一番言いたかったことを粗描してみました。
今後ネタバレブログに舞台を移して単行本を始めから読み直して細かく検討していきたいと思います。
ご意見ご感想ありましたら、ブログの方にコメント欄があります。そちらでお待ちしております。
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カテゴリ: 20世紀少年
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